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美山町の町長、町議選で有塚達郎町長が無投票で再選され、先日初登庁した。十四人の議員も無風で信任。来年二月に予定される福井市、越廼村、清水町との合併へ向け、最後のかじ取りを託された。目立たぬ過疎の町がどのように消滅し、また地域として再出発するのか、地域住民の視点に立った取り組みが求められる。
四年前、政治には全くの素人だった有塚氏が郵便局長から転身。「一年一期のつもりでやってきた」と、地域特性を生かしたまちづくりを振り返る。過疎に追い打ちをかけるような昨年七月の福井豪雨災害でもいち早い復旧へ奔走した。
合併は福井市への編入であり、任期はわずか十カ月足らず。「合併と災害復旧が私の仕事」と任務の自覚は明快だ。どちらがおろそかになっても「わが町美山」は成り立たない。わき目も振らず全力投球してほしい。
人口約五千四百人の町はこの十年で約一割減少した。高齢化率は30%超。財政難も深刻だ。自主財源比率も、特に災害復旧費がかさむ本年度当初予算では国庫支出金や起債などで20・9%まで下がっている。
総面積の90%が山林で耕地面積はわずか4%。商圏も福井市に組み込まれ、若い労働力の流出、土地の流動性の希薄さは活力のなさにつながっている。「過疎からの脱却」を掲げた有塚町政も厳しい現実に直面してきた。住民説明会などでも「合併が最良の選択」という町長の基本姿勢にブレはなかった。
福井市との合併は当初、鯖江市を含め中核都市を目指した対等合併から事実上、福井市への吸収になった。「住民サービスが低下するのでは」「美山らしさがなくなる」といった住民不安は当然といえば当然だ。
町長も初訓示で述べたが「美山らしさ」とは何か。行政と住民の力がはぐくんできた地域風土や文化、暮らしやすさをどう維持、発展させていくのか。これまでの合併論議では突っ込んだ議論がなかった。
同町では保育の充実や地域の隅々まで走るコミュニティーバスの運行、支所廃止に代わる郵便局への機能移管、さらに豪雨災害時には仮設住宅を被災地区ごとに建設するなど、きめ細やかな施策を講じ、生活インフラの整備に力を注いできた。
合併すれば新福井市の人口の五十分の一、議員も一人になる。「地域が良くなるというのは幻想。将来ビジョンが見えない」との厳しい指摘が住民の間から出ている。既に合併調印、各議会の議決を経た段階でも、こうした不安や不満がくすぶるのは美山町だけではない。
合併後、総合支所や地域審議会などが機能すれば住民の意見は十分反映できるか。福井市街から車で二十分程度。山紫水明の町はひときわ愛町精神の強い住民が多い。行政と地域住民が一体となり協働しなければ地域づくりは減退し”強者の論理”に振り回されるだけだろう。
「美山町の総仕上げ」ではなく、住民主体の地域づくりが今スタートするという自覚を新たにし、何より住民が美山の新たな価値創造へ動いてほしい。
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