(11) 越前薬師 福井市薬師町
「田吾作」 美化に一役
美山駅を過ぎた列車は、次第に狭い谷間へと向かう。羽生川と国道158号、そして越美北線が並行して走る幅は、狭いところで30―40メートル。この辺り一帯は「物干しざおが架かるような所」と言われるほど山々が迫っている。そこに越前薬師駅は、ひっそりたたずむ。
山と山の間を縫うように走る越美北線。越前薬師駅周辺では美化活動が始まっている
駅のある薬師町には上、下薬師の集落があり、明治初期までは、それぞれ絵戸、百戸という地名だった。駅前の集落は下薬師で、15戸と世帯は少ないが、美山地区が生んだ“エンターテイナー”が住んでいる。県内外のイベントに引っ張りだこの名物おじさん、「百戸田吾作」=本名・前田正治(56)=さんだ。
こっけいな踊りなどで人気者の田吾作さんは、体調を崩し昨年2月に手術。退院後、体調も回復し、豪雨により止まっていた越美北線の再開に合わせるかのように、役者活動も再出発した。
駅や車内で“田吾作ダンス”を披露するなど、越美北線の利用促進に一役買っている。体重は88キロから66キロへと激減し、トレードマークだったふくよかなおなかは引っ込んだが、磨きがかかった軽快さで笑いを誘っている。
現在、力を入れているのが地元、越前薬師駅周辺の整備。「注目してくれる駅にならんかなあ」と思い立ち、駅前の農地に水を張りスイレンを、歩道にはアーモンドの木を植えた。まだ始まったばかりだが、近所の人も草取りなどに積極的に協力し、美化活動がスタートしている。
全線再開1周年に合わせ、車内で存続を訴える田吾作さん
1960年の開通時から同駅を利用し、学生時代は通学の足として欠かせなかった越美北線。豪雪の時は、地元住民総出で線路の除雪に繰り出すなど、思い入れは大きい。
県内外から招かれイベントを盛り上げている田吾作さんは「時間はかかるだろうけど、人が見に来るようになるまでにしたい―」と話す。次は、花々に囲まれた地元の駅で、愉快な田吾作ダンスを披露することを夢見ている。
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