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こちらは福井市美山地区です(旧・足羽郡美山町)

(財)あしたの日本を創る協会が発行する自治会・町内会情報誌『まちむら』92号に、みやま木ごころ一座が紹介されました。

合併しても美山はみんなのふるさと 福井県美山町・みやま木ごころ一座

 風邪を引いて大事をとり前日の通し稽古では声だけ“代役”を立てた藤田ももさん(中学一年)の、はかなくも美しい演技が観客の心をひきつける。最後のセリフ「美山よ、さようなら」。緞帳が下りてくる。満員の会場から大きな拍手が沸き起こる…。
 平成十八年二月一日、美山町は福井市と合併する。町民劇団としては最後の公演。演じる側にも観る側にも特別な一日だった。
 「美山のすばらしさをどう発揮するかが今回の課題」と座長の林幸男さんは公演パンフレットに書いた。「ふるさとの民話を上演することで、ふるさとへの愛着と誇りも感じてきました」とも。この言葉が示すとおり、木ごころ一座は一貫してふるさと美山にこだわったお芝居を手作りで上演してきた。
 この日上演されたのは、人間と妖精のやりとりで自然の大切さをテーマにした「あしたも笑顔で♪」と雪んこ六人兄弟が少女を助ける民話を素材に取った「雪んこ六兵衛」の二作。前者は劇団卒業生の森田恵子さん、後者は林さんの脚本。一〜四回目は作・演出はプロに依頼していたが、五回目からは自分たちの手で作・演出をこなしてきた。木ごころ一座が結成されて九年。「美山の民話を 美山の劇場で 美山の劇団が」をキャッチフレーズに、手作りの町民劇団として上演を続けてきた。
 そうした中で今回は、平成十六年七月に大きな被害を出した福井豪雨水害からの復興と美山の合併をモチーフにした。練習は夏休みからスタートして、約四か月、三十回以上に及んだ。例年は受験を控えている中学生の出演はむずかしいところだが、今回の芝居には六人が出演している。これも、子どもたちが持っている木ごころ一座に対する魅力の表れだ。
 前日の通し稽古で、舞台監督の清水正一さんは「停滞気味だったけど、三日前から急に上手になった」と一瞬笑った。「大人も一時二時まで直前の準備があって、子どもたちに怒ったりしてかわいそうだったけど…」とも。裏方を支える大人たちは、本番直前の一週間は練習後の片付けなどもあり、連日の午前様。「だけど」と清水さんは言う。「家族の協力なしではできなかった」。夜九時までの練習を九時半まで延長すれば、その分お迎えも遅くなる。そして出た答えは、「来年もゼッタイにやります」。いろいろな人たちの理解と協力があるからこそ、九年間続いてきた。

 今年初参加の子どもは、初め声も出なくて、「この程度かな」と大人もあきらめていたというが、その上達振りははっきりと伝わってくる。長者役の伊藤丈裕くん(小学五年生)もそんな一人。愛嬌のある演技が観客の笑いを誘った。
 「大地」と「太陽」役の宮本知世ちゃん(小学三年生)と錦古里真希ちゃん(小学四年生)は女の子。男の子役が実に可愛いが、やっぱり女の子。当初は男役を嫌がったという。「だけどね、一番元気なのが大地と太陽」と相好を崩す林さん。六兵衛役の山本真生くん(小学五年生)は、まじめな性格で表情が硬かったというが、「家で一人練習するなど影で相当な努力を重ねたんだろう」と林さんは言う。大人たちは子どもたちの頑張りをちゃんと見ている。だからこそ、こうして一つの舞台が、出来上がり、演じきることができ、観客の心に伝わっていく。
 この日、昼の部・夜の部合わせて八百人が子どもたちの演技に魅了された。「子どもの文化活動は停滞させてはいけない。そのために林さんはよくここまでやってくれた」と話すのは町議会議長の高瀬信夫さん。「後継者ができたのが一番うれしい」と林さん。大人と子どもが力を合わせてやり、子どもたちが自信を持ってやれるようになったことが、町民劇団の一番大きな“成果”。
 昼の部のカーテンコールの後、お礼を込めて一座から有塚達郎町長に花束が贈られた。町長からこんな言葉が飛び出した。「美山町は合併して福井市になりますが、来年も木ごころ一座には変わらぬ支援をいただけることが決まりました」。会場は拍手に包まれた。
 終演後出演者は全員で、会場を後にするお客さんたちを見送る。「ありがとうございましたー」「すごくよかったヨー」「上手やったヨ」。お客さんを見送るのは、観客も含めてみんなで作っている舞台という思いを込めた感謝の気持ちの表れなのだろう。
 「ちょっと疲れたけど、満足していい気分でしょ?」と林さんが子どもたちに声をかけていた。このときの子どもたちの笑顔には、つらい練習を乗り越えて、本番を終えた達成感がうかがえる。そして、仲間とともに力を合わせてやることを学んだ。そこには少しだけ成長した子どもたちがいた。最後に清水さんは子どもたちにこう言った。「ぜひ家族の人たちにお礼を言ってください」。
 合併して美山町はなくなる。しかし、美山っ子は来年もまたこの舞台から、変わらずに、感動を届けてくれるに違いない。来年は十回目の記念公演となる。

 

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