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風邪を引いて大事をとり前日の通し稽古では声だけ“代役”を立てた藤田ももさん(中学一年)の、はかなくも美しい演技が観客の心をひきつける。最後のセリフ「美山よ、さようなら」。緞帳が下りてくる。満員の会場から大きな拍手が沸き起こる…。
平成十八年二月一日、美山町は福井市と合併する。町民劇団としては最後の公演。演じる側にも観る側にも特別な一日だった。
「美山のすばらしさをどう発揮するかが今回の課題」と座長の林幸男さんは公演パンフレットに書いた。「ふるさとの民話を上演することで、ふるさとへの愛着と誇りも感じてきました」とも。この言葉が示すとおり、木ごころ一座は一貫してふるさと美山にこだわったお芝居を手作りで上演してきた。
この日上演されたのは、人間と妖精のやりとりで自然の大切さをテーマにした「あしたも笑顔で♪」と雪んこ六人兄弟が少女を助ける民話を素材に取った「雪んこ六兵衛」の二作。前者は劇団卒業生の森田恵子さん、後者は林さんの脚本。一〜四回目は作・演出はプロに依頼していたが、五回目からは自分たちの手で作・演出をこなしてきた。木ごころ一座が結成されて九年。「美山の民話を 美山の劇場で 美山の劇団が」をキャッチフレーズに、手作りの町民劇団として上演を続けてきた。
そうした中で今回は、平成十六年七月に大きな被害を出した福井豪雨水害からの復興と美山の合併をモチーフにした。練習は夏休みからスタートして、約四か月、三十回以上に及んだ。例年は受験を控えている中学生の出演はむずかしいところだが、今回の芝居には六人が出演している。これも、子どもたちが持っている木ごころ一座に対する魅力の表れだ。
前日の通し稽古で、舞台監督の清水正一さんは「停滞気味だったけど、三日前から急に上手になった」と一瞬笑った。「大人も一時二時まで直前の準備があって、子どもたちに怒ったりしてかわいそうだったけど…」とも。裏方を支える大人たちは、本番直前の一週間は練習後の片付けなどもあり、連日の午前様。「だけど」と清水さんは言う。「家族の協力なしではできなかった」。夜九時までの練習を九時半まで延長すれば、その分お迎えも遅くなる。そして出た答えは、「来年もゼッタイにやります」。いろいろな人たちの理解と協力があるからこそ、九年間続いてきた。
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